夢の始まりに前触れはない。


試聴機のプレイボタンを押したらどっか違う世界に立ってた。


薄い霧がかかっていてどこかはわからない。
そもそもここが現実なのかどうかも判断つかない。
でも決して身の危険を感じるような空間ではない。
童話の中に出てくるようなキラキラした森の中。


猫とか鹿とか鳥とか動物がたくさんいる。
「いる」というか「生活」してる。人間みたく。
僕は彼らの暮らしを覗いている。


朝が来るし、夜もやって来る。
森を散歩したり、星に見守られながら眠る。


風が吹くし、雨も降り出す。
手を繋いだり、雨宿りしながら喋ったり。


春が来るし、冬も舞い降りる。
色で溢れては、一面真っ白になったり。


見知らぬ世界だけど優しくドリーミーな風景があった。


試聴機のストップボタンを押して、
そこがタワレコ難波店の4Fフロアだったとしても、
頭の上に溶け残った雪が積もってるような気がした。


頭を振り払ってみたけどもちろん積もってはいなかった。
けど、もう一度夢の世界にお邪魔したかったから、
迷うことなくレジへと向かった。

L.S.T.

L.S.T.